2008.04.20 Sun
4月19日を「レコード屋さんの日」に
どうして、4月19日が「レコード屋さんの日」にふさわしいのか、よく分からないけど、既に英語の公式サイトがあって、そこにはポール・マッカートニーやブルース・スプリングスティーンからのコメントが寄せられている。
こんな記念日を制定しようしている背景には、日本だけではなく、アメリカやイギリスでも、レコード店の閉店が相次いでいるという事情があるようだ。
ぼくの住んでいる街でも、2年前に大きめのレコード店が閉店してしまって、CDや楽器を扱っているお店は一軒しかない。そこはおじさんとおばさんが家族でやっているような小さな店で、品揃えは演歌が主力。だから、日常生活の中では、お店でCDを見ながら買えなくなってしまった。
2000年あたりから、ぼくはCDの主な購入先をネット通販にシフトさせていたので、大きめのレコード店が閉店した時も「アマゾンがあるから、関係ないや」と思っていた。少々マニアックなCDでも簡単に手に入り、お店まで行かなくても家に届いて、さらに値段も安いネット通販はあまりに魅力的だったからだ。
ネットからダウンロードして、MP3プレイヤーで聴くことが主流になっても、ぼくのようにレコードで育った世代は、CDという現物を手元に置いておきたい思っているはずだ。レコード店の衰退をネットや携帯からダウンロードが原因とする意見が目立つけれど、消費者がCDの主な購入先をネット通販に変えてしまったことも、レコード店の衰退の大きな原因のひとつではないだろうか。
歴史を振り返れば、音楽は記録するメディアの影響を大きく受けてきた。
例えば、1950年前後に収録時間の短いSP盤が長時間再生可能なLPレコードに切り替わっていった時、音楽の表現の幅が一気に広がった。マイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」などはLPレコードの普及なしには存在できなかったジャズの名盤だろう。
さらに、ビートルズも様々なテクノロジーやレコーディング技術、記録メディアの進歩と共に成長し、音楽スタイルを大きく変えていったグループだ。
そして、1982年にCDが登場する。
メーカー側に早くCDを普及させたいという思惑があったとはいえ、わずか4年後の1986年にはCDの販売枚数がレコードを追い抜いてしまった。これはネットからのダウンロード販売の売り上げ高がCDを上回った現在の状況と同じ。つまり、歴史は繰り返すのだ。
しかし、ダウンロード販売には実店舗が必要ない。そのために、音楽産業の構造が大きく変わってしまうことが問題なのだろう。
ぼくは1960年代生れなので、レコードの全盛期とCDへと急激に移り変わった時代をよく知っている。さらに、インターネットというメディアとも創成期のころから付き合ってきた。
そんな中で実感しているのは、音楽を記録するメディアが小さくお手軽になるたびに、中に入っている音楽自体も小さくなって、鑑賞する音楽から消費される音楽に変わっていったことだ。
たとえば、LPレコードの時代はレコードを聴くという行為が儀式的ですらあった。その儀式はレコードを買う時点から始まっていた。
少ないおこずかいを貯めて、レコード店に行って「これだ!」という1枚を時間をかけて選ぶ。子どもにとって、決して安くはなかったLPレコードを買う時には、ハズレを選ぶことは許されなかったのだ。
そして、慎重に選んだLPレコードを大事に抱えて、家に戻り、レコードプレイヤーに乗せる。
この時も、今のCDプレイヤーのようにボタンを押すだけとはいかず、レコードの上に針を慎重に置かなければならかった。さらに、A面が終わると、一度立ち上がってレコードをB面にひっくり返すという儀式もあった。
レコードが回って、スピーカーから出てくる音には、とにかく集中して耳を傾けた。たとえ買ったレコードが、初めて聴いた時には理解不能で「ハズレだったかな」と感じたとしても、良さが分かるまで無理をして何度も聴いた。「レコードが擦り切れるまで聴く」という表現は決してオーバーではなく、実際にそれに近い聴き方をしていたのだ。
とにかく、レコードをかける時は純粋に音楽を聴く時間で、大切なレコードを何かをしながらBGMとして聴くことはできなかった。ぼくがここで紹介している名盤の数々も、そうしたレコードの時代に初めて聴いたものが多い。そして、レビューを書きながら「レコードで聴いてたものは、体への浸透力が違うな」と感じている。
でも、ぼくはレコードの時代にはもう戻れない。レコードプレイヤーを買ってみようかなと思ったことはあったけれど、今は生活の中にあの儀式を繰り返す余裕はなく、お気楽に聴けるCDばかりが増えていく。そのCDですら、今や時代遅れになろうとしてのに・・・・。
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最近読んだ「僕の音盤青春記 1971-1976」の作者の牧野良幸氏は、ぼくより4歳年上のようだが、レコードを聴くことが特別な行為だった時代の少年の気持ちが鮮やかに描かれている一冊だと思う。
そういえば「RECORD STORE DAY」のHPで、一番最初にコメントが紹介されているポール・マッカートニーが、現在契約しているレコード会社はビートルズ以来所属していたイギリスのEMIではなく、スターバックスが設立したレコードレーベル「Hear Music」だ。
そして、ポールの最も新しいアルバム「Memory Almost Full」は、従来のレコード店だけではなく、全世界のスターバックスの店舗でも販売されている。さらに「iTunes Music Store」では、1970年から現在までに発表されたポールのソロアルバム前25枚分の音源が、ダウンロード購入することが可能だという。
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ポールのような大物アーチストですら、レコード店以外の場所にCDの販路を求め、すべてのソロアルバムを「iTunes Music Store」でダウンロード販売する時代である。この先もレコード店、CDショップの衰退には歯止めが利かないかもしれない。
でも、自分の街からレコード店が消えるということは、文化の発信地のひとつが消えることに等しい。CDのジャケットを手にとって見ながら買うという行為は、ぼくの日常生活の中の楽しみのひとつだったし、店で初めて出会った音楽もあった。
困ったことに、この手の普通の楽しみの大切さは、失ってみて初めて分かることなのだ。
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| BEATな話題 | 18:30 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑




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