今年は昨日から本格的な仕事始めという人も多いだろう。ぼくもお正月気分が体から抜けきらず、今週は長ーく感じそうな予感がするけれど、今日あたりからはいつものペースでエントリーを更新していくつもりだ。
今年最初のレビューに選んだのは「クロスロード・ギター・フェスティバル2007」のDVDである。
リリース直後に一度見て、正月にも見直したのだが、多彩なギタリストが次々と登場するので、とにかく飽きない。前回の「クロスロード・ギター・フェスティバル」のDVDと同じ2枚組みだが、今回は1日限りのコンサートだったせいか、前作にあった散漫さも感じられない。
DVDは実際のコンサートの流れに沿って編集されているようだが、全曲収録ではなく、ダイジェスト版だ。でも、ステージの進行具合、アーティストのチョイスからはコンサートの主催者であるクラプトンの意図するものが、見えてくる気がする。それは先達のギタリストへのリスペクトと自らのキャリアの総括だ。
リスペクトという観点から登場するのはB.Bキングとヒューバート・サムリン、そしてトリをまかされたバディ・ガイといったブルースギタリストである。
中でも81歳のB.Bキングの貫禄は相当のものだ。さすがに年齢のせいか手数は多くないものの、チョーキング一発で「すげえ」と思わせるフレーズからは、彼以外には出しえない唯一無二のトーンを感じる。今や伝説のブルースマンともいえるヒューバート・サムリンとB.Bキングの競演は、このDVDのハイライトシーンの一つといえるだろう。
コンサート中盤での登場は、出番が早過ぎる気もするけど、それも彼らの年齢に配慮したものだろうか。
イスにどっしりと腰をかけてギターを弾くB.Bキングとは対照的に、相変わらず元気なバディ・ガイの姿は昔とそれほど変わりがなく、未だに衰えることのない超絶かつブルージーなフレーズで、コンサートの最後を盛り上げる。
自分ではトリをとらずに、バディ・ガイにまかせたクラプトンからは、彼らへのリスペクトの想いが感じられる。
ディスク1のアルバート・リーとの久しぶりの競演、テレキャスターが実によく似合うシェリル・クロウとのデュエット(今は良いお友達らしいけど、妻や子どもが見守る中で、かつての恋人と一緒に「タルサ・タイム」を唄うクラプトンって、すごいかも)。ディスク2のデレク・トラックスを交えてのドミノスのナンバー「Tell The Truth」やロビー・ロバートソンの登場、スティーブ・ウインウッドとのブラインドフェイスの再現は、クラプトンの長いキャリアの総括ともいえるだろう。
さらに「もし、彼が生きていれば、ここに一緒にいてくれただろう」というコメントから始まる「Isn’t It A Pity」はジョージ・ハリソンへのレクイエムだ。
最近の活動からは、自らのキャリアのまとめのようなものを感じさせるクラプトン。ここでも過去の自分を精算するかのようなステージを繰り広げているのが印象的だった。
その他にも、クラプトンと同世代のギタリストの登場も見逃せない。中でも、ぼくが心を打たれたのはジョニー・ウインターの姿だ。
CBSとの巨額な契約金から「100万ドルのギタリスト」といわれ、70年代には名盤を連発したジョニー・ウインターだが、最近は体調が悪く、視力も弱くなって、ほぼ活動停止状態だったらしい。
そんなジョニー・ウインターがデレク・トラックス・バンドを従えて、ステージに登場するのだが、痩せこけた体は立ったままのステージには耐えられないらしく、イスが用意される。正直なところ、とても痛々しい姿で、ギターをちゃんと弾けそうには見えない。しかし「Highway 61 Revisited」が始まると、彼のギターからはあの独特のフレーズが弾き出されるのだ。これには、ホントにうれしい驚きを感じた。
ジョニー・ウインターの公式サイトのブログを見ると、昨年の11、12月に何度かもステージに上がっているようで、体調も少しずつ回復しつつあるのかもしれない。
ジェフ・ベックもクラプトンと同世代のギタリストだが、彼の場合は「枯れる」や「まとめに入る」などという言葉とは無縁のような気がする。
今回は
以前にも書いたウワサの美少女ベーシスト、タル・ウィルケンフェルドとステージに登場するが、大きな画面で見ると、サングラスで隠しているジェフ・ベックの眼がにやけているのがよーく分かる。「Cause We’ve Ended As Lovers」の途中では、大きな手振りをして、タル・ウィルケンフェルドにソロを渡すのだが、その仕草がシリアスな曲に似合わないったらありしゃない。
還暦を過ぎたというのに、にやけながら美少女ベーシストとプレイするジェフ・ベックは、この先も決して円熟という方向には向かわないのではないだろうか。
それにしても、大画面で見るタルちゃんは良いですなあ。共演者がみんなデレデレとした顔になるのも、分かる気がする。
ぼく以前から「クラプトンはダメ男(但し、とんでもなく音楽的な才能のある)」と書き続けてきたし、アル中だった頃にリリースされた、いわゆるレイドバック期のアルバムが大好きなことにも変わりはない。
だから、最近のあまりに立派な姿のクラプトンに違和感を感じ続けてきたけれど、こんなコンサートを主催し、出番以外でもステージの脇から柔らかな視線を注ぎ続けている姿を見せられると「この人、ホントに変わったんだなあ」と思い直すしかない。
70年代にはキース・リチャードと並んで「ジミ・ヘンドリックスの次にいなくなるかもしれないギタリスト」の筆頭にあげられていたクラプトンが、21世紀になっても精力的に活動を続けていることを素直に喜びたいと思う。
大物ギタリストの合間に、ロバート・ランドルフやジョン・メイヤー、デレク・トラックスといったクラプトンの次世代のギタリストも登場する「クロスロード・ギター・フェスティバル2007」は、ギターの世界の「現在・過去・未来」を俯瞰するかのようなDVDだ。
(追記)
・今回の「クロスロード・ギター・フェスティバル」では、ステージで使われるギターの中で、ストラトキャスターの割合が異常に高いような気がする。ストラト率80パーセント以上にも見えるコンサートは、やはりクラプトンの影響力が大なんだろう。
・スティーリー・ダンの結成に加わり、一時期はドゥービー・ブラザーズに加入していたジェフ・バクスター。彼が人のあまりいないサブステージでプレイしている様子が、本編とは別のボーナス映像に収められていた。そのキャリアを考えると、そんな場所に収まるようなギタリストではないような気がするのだが・・・・。
ちなみに、現在のジェフ・バクスターは軍事アナリストとしても活動し、アメリカ国防総省の軍事顧問を務めているそうだ。
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