2年前にギターを再開した時から、ずっと欲しかったアンプがある。フェンダーのツイード・チャンプだ。
これまで、色々なアンプを試してきたけれど、クラプトンが「レイラ」のレコーディングにも使ったというツイード・チャンプが欲しいという気持ちは、いつも心のどこかにあった。ぼくにとって、ツイードの生地をキャビネットに貼り付けた小粋で小柄なアンプは、常に魅力的な存在だった。
でも、このアンプには手が届きそうで届かなかった。
価格やメンテナンスを考えると、ビンテージのオールドアンプは論外だし、フェンダーUSAの現行モデルには、よく似たスタイルの
「Pro Junior」と
「Blues Junior」があるけれど、どちらも残念ながらツイード張りではない。
限定生産の「Blues Junior」のツイード版なんてのも見つけたが、これにはレリック加工してあるのが気に入らない。
Fender USA Blues Junior Lacquer Tweed “Relic” 一時期は元祖チャンプの復刻版
「Champion 600」の購入も真剣に考えた。
これを持っている友人が数人いて、誰に聞いても評価の高いアンプなのだが、やはりツイード張りではないのがネックになって、買うまでには至らなかった。
こうなると選択肢はフェンダーのツイードアンプの回路を部品や素材を含めて、精巧にリバイバルさせているヴィクトリアあたりのチャンプしかないとも思ったが、これはかなり高価な買い物になる。
Victoria Amp #518-T Champ うーん、すごくそそられる一台でしたが、さすがにこれは買えません。
このように「ツイード・チャンプが欲しい、欲しいよお」と物欲ムラムラで、あーでもないこーでもないと考えていた、今年の3月の終わり。いつものようにハードオフをブラブラしていると、アンプのコーナーの片隅にツイード柄のアンプが見えた。
「どーせ、どこかの安物のチャンプもどきだろう」と思いながら近づくと、アンプの正面にはまがいもなく「Fender」の金属製のプレートが!
そして、プライスカードに書かれていた値段は31.500円。「これは何かのまちがいか」と、もう一度プライスカードを確かめると、メーカー名が「Fender Japan」となっていた。

ネットや本を見て、エレキギターのブランク期間の約25年は必死に埋めたつもりだったが、フェンダージャパン製のツイード・チャンプがあったことは知らなかった。
目の前にあるのは、まちがいなくフェンダーのツイード・チャンプ。でも、ぼくには日本製のチャンプがどのような素質を持ったアンプで、付けられている値段が適正なものなのかも分からなかった。
一度、レジに持って行きかけたアンプを元に戻し、家に帰ってネットを検索してみると、フェンダー・ジャパンのツイード・チャンプは1990年前後に生産されていたもので、HPなどを見ても、ユーザーの方の評価が高かった。さらに、ヤフオクに出品された場合も35.000円前後で落札されているようだ。「これは買いだ!」。ぼくはあわててハードオフに戻った。
このようにして、ようやく手に入れたツイード・チャンプだが、日本製のチューブアンプから出てきたトーンは、ひと言でいうと「クリーンで素直」。とにかく、クリーントーンが素晴らしい。
特にシングルコイルのフェンダー系のギターによく似合う澄んだ音色は、惚れ惚れするほどの美しさだ。もちろん、ハムバッキングのギターをプラグインしても、甘くて太いトーンが出てくる。とにかく、このアンプはギターの持っているトーンを変に加工せずに、素直に出力してくれる気がする。
ついでに、自分のピッキングやアタックのニュアンスなどもモロに出てしまうから、落ち込むことがありますが・・・・。

アンプの構成はナローパネルに8インチスピーカー、使われている真空管は6V6GTA×1、12AX7×1とオリジナルのチャンプと同じだが、コントロールパネルにはトレブルとベースのつまみが付いている。ひょっとしたら、このアンプは回路的には60年代に生産されていたブラックパネルのチャンプをコピーしているのかもしれない。
ぼくは基本的にどちらのトーンもフルアップにしているが、テレキャスターなどハイの強いギターで、高音が耳につくような場合はトレブルを少し絞る。しかし、フルアップのままでも耳に痛いほどの高音にならないあたりは、さすがにチューブアンプだと思う。
さらに、ボリュームを上げた時の箱鳴りにも、軽くリバーブがかかったような残響感があって、とても良い感じだ。
唯一の欠点はフルテン近くまでボリューム上げないと、トーンがドライブしないことかもしれない。プリ管を換えれば、歪みのポイントが変化するのかしれないけれど、現状では目盛り9あたりでも、ようやく軽いクランチといったところだ。おそらく、普通の家ではクランチまでもボリュームは上げられないだろう。
でも、ぼくはこのアンプに変な色付けをしたくないので、エフェクターなしで使うようにしている。クリーントーンで自分の弾き出すギターの音と素直に向き合うべきアンプだと思うからだ。
今なら中古を比較的お手軽な値段で買えそうな、フェンダー・ジャパン製のツイード・チャンプ、これは隠れた名機かもしれないですぜ。
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