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秋の空気感にぴったりな「Speak Like a Child」

Speak Like a ChildSpeak Like a Child
Herbie Hancock


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 今年の北海道は夏が長い。例年ならお盆が過ぎれば秋の気配が濃厚になってくるのだが、今年は9月中旬になっても夏の空気が残っていた。
 しかし、昨日あたりから夜にしっかり布団をかぶって眠らないと寒くて、日中の日差しの中にも秋らしさを感じるようになった。北海道の夏の終わりは、いつも突然やって来る。そして、短い秋が終われば、すぐに長い冬である。

 ストーンズの「A Bigger Bang」、ブルース・スプリングスティーンの「Live 1975-85」と、このところ夏らしく熱いCDばかりを紹介してきたので、今日は秋の透明な空気にぴったりな一枚を。
 今日の午前中、柔らかな日差しの中で聴いたのは、ハービー・ハンコックの「Speak Like a Child」。ピアノトリオにフリューゲルホーン、アルトフルート、バストロンボーンがからんでいくというジャズのフォーマットとしては少し風変わりな構成が、なぜか秋の空気に似合う。特に2曲目の「Speak Like a Child」の流麗なピアノの流れと3管編成のホーンのアンサンブルは、ため息がでるほど美しい。
 ついでにロマンチックで秋らしいジャケットも秀逸。素晴らしいデザインのジャケットが多いブルーノートの中でも、叙情性では一番ではないだろうか。

 ハービー・ハンコックが「Speak Like a Child」を録音したのが1968年3月。彼はまだマイルス・デイビスのクインテットに属していた。
 その頃のマイルスはジャズというフォーマットから大きく羽ばたこうとしていて、ハービー・ハンコックもレコーディングの時に「おまえ、今日はこれを使えよ」と、いきなり弾いたこともないエレクトリック・ピアノの前に座らされたりしたらしい。
 ロックやファンクにどんどん接近していった過激なマイルスと一緒にプレイしていたくせに、ハービー・ハンコックはメロディアスでロマンチックな「Speak Like a Child」のようなアルバムを、こっそりとブルーノートで録音していたのである。

 「Speak Like a Child」は当時マイルスが目指していた音楽とは大きく異なるかもしれないが、この多様性がハービー・ハンコックというピアニストの本質であり、魅力なのだと思う。

| ジャズの名盤 | 10:37 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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暑苦しいまでに濃厚な,マイルス・デイビスの「On the Corner」

On the CornerOn the Corner
Miles Davis


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 ここ数日の北海道は、とても蒸し暑い。風が吹いてもまとわりつくような重さで、ちっとも北海道らしくない。
 涼を求めて北海道にやってきた旅行者はげんなりだろうが、実は住んでいる者はそうでもない。年間1週間あるかないかの暑さが、うれしいのだ。もう3ヶ月もすれば、雪が降る。厳しい冬のことを考えれば、少々暑くても不快ではない。
 今日の昼下がり「暑い日にはレゲエかビーチボーイズやね」と思いながらCDラックに向かうと、マイルス・ディビスの「On the Corner」が目にとまった。夏の午後には似つかわしくないほどに、濃厚な音が詰まったアルバムだ。

 「On the Corner」はドラムやパーカッション、手拍子が入り乱れて鳴りまくり、のたうちまわるリズムの隙間をついて、マイルスのワウワウ・トランペット(ワウワウというギター用のアタッチメントを使って電気的に音を歪ませている)が絡みつく。その他にもサックス、エレピ、オルガン、エレキギター、ベース、さらにタブラー、シタールといったインド楽器も加わって、音の洪水を作り出している。
 初めて聴くと少し不気味な音にも感じる「On the Corner」は、まるで「妖怪大戦争」のようなアルバムだ。ある意味で夏らしい。

 「On the Corner」はジャズではない。このアルバムはファンクの影響が強いともいわれているが、はたしてこれのどこがファンキーなんだろう?ぼくには分からない。アルバムタイトルからストリートミュージックの頂点を極めた1枚という評価もあるらしいが、街角で踊りながらこれを聴けるか。
 「じゃあ、この音楽は何?」と問われると答えに困る。結論はきっと「マイルスの音楽」なんだろうなあ。

 驚異的なのはマイルスがこのアルバムを作ったのが、今から30年以上も前の1972年ということだ。鋭利な響きの音の塊は、少しも古臭くは感じられない。むしろ、21世紀の今だからこそ理解できる音ではないか。
 既存のジャンルに属さないマイルスの音。「ジャンル分けなどくだらねえ」と笑い飛ばすかのように独特で迫力のある音。「On the Corner」の後にも先にも同じ様な音はない。

 暑い夏の午後に聴く「On the Corner」の濃厚なリズムのうねりは、なかなか痛快だった。明日も北海道は蒸し暑いようだ。

| ジャズの名盤 | 20:21 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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シンプルな「two.too」にシビレる

two.tootwo.too
Fried Pride


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 よく考えるとBlogを始めて以来、初の新譜紹介である。
 「Fried Pride」というギターとボーカルだけの2人のグループが、世間的にどこまで知られているのかは分からないけれど、ぼくは1年に1枚ペースでリリースされる彼らの新作を心待ちにしている。

 「Fried Pride」を知ったのは数年前のこと。NKN・FMを聴いていると、ジャズのライブ番組で「Fried Pride」のスタジオライブが始まった。
 最初は仕事をしながら「ふーん、ギターとボーカルだけね。つまり、日本のタック&パティか」と思って聴いていたのだが、そのうちキーボードを打つ手が止まり、アンプのボリュームを上げに行った。彼らのプレイにぶっとんでしまったのだ。

 スタジオライブでカバーした曲にも驚いた。ストーンズの「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」にEW&Fの「宇宙のファンタジー」である。
 かつて、こんな曲をカバーしたジャズのバンドがあったか(もし、あったら、ごめんなさい)。それをパーカッションを加えた、わずか3人だけでプレイするのだから無謀である。しかし、これが素晴らしかった。
 
 まず、ボーカルのshiho。「ホントに日本人?」と思うほど、英語の唄がうまい。声の好き嫌いはあるかもしれないけれど、ぼくの好きなタイプのボーカリストだ。
 ギターの横田明紀男は「超絶技巧のギタリスト」とオフィシャルHPでは紹介されているが、それをあまりひけらかすことなく、特に唄のバックのプレイが抜群である。
 
 5月21日にリリースされたばかりの「Fried Pride」の新作は、原点に戻って全曲2人だけの演奏。しかし、これがまったく薄っぺらく感じない。むしろ、唄とギターの巧さだけを楽しめる点で好ましい。
 現時点ではAmazonの曲目リストが間違っているので「two.too」の収録曲を書いておく。

 01 キッス・オブ・ライフ
 02 パートタイム・ラヴァー
 03 愛のプレリュード
 04 アイ・ワナ・ビー・ラヴド・バイ・ユー
 05 マイ・フェイバリット・シングス
 06 雨の日と月曜日は
 07 バートランドの子守唄
 08 ウィル・ビー・トゥゲザー
 09 フィール・ライク・メイキン・ラヴ
 10 この素晴らしき世界
 11 リオデジャネイロ・ブルー
 12 ディグ・イット!
 13 ベイビー・アイ・ラヴ・ユア・ウェイ
 14 虹の彼方に

 12曲目だけがオリジナル。それ以外はすべてカバーである。
 シャーデー、カーペンターズ、スティービー・ワンダー、スティング、ロバータ・フラッグ、ピーター・フランプトンなどのお馴染みの曲に、ジャズのスタンダードソングが数曲。誰もが知っている曲ばかりなので、すんなり耳に入ってくるだろうし「Fried Pride」の斬新さも分かりやすいと思う。

 ただ、今さら「マイ・フェイバリット・シングス」や「この素晴らしき世界」などの少々手あかのついたスタンダードソングをカバーする必要はないのではないか。
 「Fried Pride」はジャズというくくりに属する(でも、音を聴くとそんなジャンル分けは無意味だと思う)ようで、そのあたりにも配慮してのことだろうけれど、圧倒的に面白いのはロックやポップスのカバーだ。

 良いメロディーに古いも新しいもないけれど、今さらイメージを変えようがないジャズの定番ソングに手を出すことはない。好きだから、あえて言わせてもらう。「Fried Pride」はそろそろジャズという窮屈なジャンル分けから羽ばたくべきだ。

| ジャズの名盤 | 11:19 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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開放感のあるジャズ「処女航海」

Maiden VoyageMaiden Voyage
Herbie Hancock


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 今日の午前中は「春にふさわしい音を」ということで、ハービー・ハンコックの「Maiden Voyage」(邦題は「処女航海」)を聴いた。その名の通り、海をテーマにしたアルバムだ。
 ジャズは薄暗い地下の酒場でタバコの煙と共に聴くといったイメージがあり、どこか閉鎖的で不健康な感じのする音楽かもしれない。しかし「Maiden Voyage」の音は開放感にあふれている。おろらくギラギラと輝く太陽の下で聴いても、何の違和感もないだろう。こんなジャズは珍しい。

 メンバーはピアノのハービー・ハンコックをリーダーに、トニー・ウイリアムスのドラム、ロン・カーターのベースという親分のマイルス・ディビスとウエイン・ショーター抜きの黄金のクインテットの三人。抜けた二人の代わりにフレディー・ハバードがトランペット、ショーターの前にマイルスのバンドにいたジョージ・コールマンがテナー・サックスを吹いている。

 マイルスがいないだけの、ほぼ黄金のクインテット。なのに、出てくる音は「あんたら、親分がいないとここまで変わるか」と思うほど、違う。
 これは決して悪い意味ではなく、マイルスのにらみがなく、自由にプレイできたことが「Maiden Voyage」の音の開放感を生み出した。逆にいえば、マイルスのバンドに対する支配力、影響力はとてつもなく大きかったのだろう。

 60年代、ジャズという音楽の閉塞感を強引に突き破ろうとしたマイルス。それをバックで支えたメンバーたちが、マイルスとは違う軽快なアプローチでジャズに風穴を開けたアルバムが「Maiden Voyage」である。

| ジャズの名盤 | 10:38 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ここにしかない音の世界「イン・ア・サイレント・ウエイ」

In a Silent Way (Dlx)In a Silent Way
Miles Davis


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 少し前に「Miles in the Sky」を紹介した時に「強引で急進的な印象のあるマイルス・ディビスは、意外にも慎重で少しずつ歩を進めるタイプだったのではないか」と書いた。
 この推測はまちがってはいないと思うが、次にリリースされた「In A Silent Way」を聴くと、マイルス・ディビスは一歩踏み出してしまえば、とんでもない場所までワープできるアーチストということが分かる。

 「In A Silent Way」には完璧にエレキサウンド化したマイルスがいる。ジャズという古臭い地平を飛び立って、成層圏を突き抜けてしまったマイルスがいる。
 もう旧来のジャズではない。「In A Silent Way」からジャズの匂いはまったくしない。しかし、ロックでもファンクでもない。安易なジャンル分けを許さない「In A Silent Way」でしか感じられない音の世界が、このアルバムにはある。

 左チャンネルからジョン・マクラフリンのギター、右チャンネルからトニー・ウイリアムスのハイハット。これにチック・コリアとハービー・ハンコックのエレピ、ジョー・ザビヌルのオルガンが絶妙に絡む。この豪華なメンツが奏でる音に、これまでとは違う新しいフレーズでマイルス・ディビスのトランペットが切り込んでいく。
 と書くと、熱いインタープレイが繰り広げられるのかと思うかもしれないが、これがどこまでもクールなのだ。大爆発はない。しかし、知的な爆発はあちらこちらにある。その瞬間が分かると「In A Silent Way」がとんでもないアルバムであることが理解できるはずだ。

 中山康樹のすごく分厚い文庫本「マイルスを聴け!」を読んで初めて気付いたのだが、二曲目の「In A Silent Way/It's About That Time」では、「It's About That Time」を挟んで前後でまったく同じ「In A Silent Way」が繰り返されているという。しかし、これが同じ音に聴こえないから不思議である。「In A Silent Way」の独特の音の世界の秘密が、このあたりにもあるのかもしれない。

 アグレッシブなサウンドで、何度聴いても新鮮な発見がある「In A Silent Way」は、マイルスのアルバムの中でもロックのリスナーにぜひ聴いても欲しい一枚である。

| ジャズの名盤 | 12:02 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ジャズという大地から飛び立とうとする瞬間の記録「マイルス・イン・ザ・スカイ」

Miles in the SkyMiles in the Sky
Miles Davis


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 1968年にリリースされた「Miles in the Sky」は、マイルス・ディビスが伝統的なジャズから、ついに飛び立つ瞬間を捉えた貴重なアルバムだ。
 ビートルズが「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンド」を発表し、クリームがロックなのにジャズのような長いアドリブをステージで繰り広げ、ジミ・ヘンドリックスが爆音ギターをかき鳴らした時代に、マイルス・ディビスだって、のんきに旧来のモダンジャズを繰り返しているわけにはいかなくなったのだろう。サイケデリックの全盛期、ジャケットもサイケである。

 一曲目の「Stuff」でハービー・ハンコックがエレクトリック・ピアノ(スタジオに行ったら、いきなりマイルスに「おまえ、今日からこれを弾け」といわれたらしい)ロン・カーターがエレキベースを弾き、二曲目の「Paraphernalia」ではジョージ・ベンソンがエレキギターで参加。部分的ではあるが、ついにマイルス・ディビスのバンドにエレクトロニクスサウンドが導入されたのだ。

 でも、楽器に電気が通ったからといって出てくる音が急に変わるわけではない。その後のピリピリと刺激的なエレクトリック・マイルスのサウンドからすると、このアルバムはジャズというジャンルから半歩踏み出した程度。マイルス・ディビスのトランペットから出てくるフレーズも、変化の兆しはあるものジャズそのものである。
 しかし、このアルバムから先、マイルス・ディビスの音が大きく変化し、ロックやファンクのフィールドにも羽ばたいてく予兆は、そこかしこに見つけることができる。つまり「Miles in the Sky」は変化の過程を楽しむアルバムだ。

 強引で急進的な印象のあるマイルス・ディビスは、意外にも慎重で少しずつ歩を進めるタイプだったのではないか。一気にエレクトロニクスサウンドを導入するのではなく、まず二曲、それも部分的に試してみる。そして、試行錯誤を繰り返しながら次のステップへ。マイルス・ディビスの歩みは、実に慎重で着実だ。

 ようやく一歩踏み出したマイルス・ディビスは、この後に怒涛の行進を続ける。「Miles in the Sky」ではジャズとロック、ファンクの中空を漂っていたが、更にエレクトロニクス化を推し進め、わずか一年弱で「In A Silent Way」という既存の音楽のジャンルには当てはまらない、今聴いても新鮮な傑作アルバムを生み出すのである。

| ジャズの名盤 | 11:25 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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マイルス・ディビスの「フォア・アンド・モア」

Four & MoreFour & More
Miles Davis


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 このところ、マイルス・ディビスを集中的に聴いている。新たなメインスピーカーのJBLのJ216PROは、マイルス・ディビスのトラペットがとても気持ちよく鳴るからだ。
 これまでかなりの枚数のマイルス・ディビスのアルバムを買い、それなりに聞き込んできたつもりだが、スピーカーを変えてから彼の音楽がより深く分かるようになってきた気がする。やはり、音の質というのは、音楽を理解するうえでとても重要なファクターだ。

 今日、昼間に聴いたのは1964年のライブ盤「Four and More」。
 トニー・ウイリアムズの恐ろしいまでに冴え渡ったドラムが繰り出すビートに、マイルス・ディビスのトランペットが過激にからむ。そのスキをついてハービー・ハンコックのピアノがリリカルに迫るという感じで、全編に渡ってホントに素晴らしい。

 村上春樹は「ポートレイト・イン・ジャズ」の中で「『フォア・アンド・モア』の中でのマイルスの演奏は、深く痛烈である」と書いている。
 「深く痛烈」。見事なまでにこのアルバムの核心をついた表現で、もう書くべきことはない。あえて付け加えるなら「Four and More」の「深く痛烈」なマイルス・ディビスは、できるだけ大きな音で聴くべきだと思う。

| ジャズの名盤 | 11:20 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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マイルスはこの一枚から

Kind of BlueKind of Blue
Miles Davis


 ジャズってのは、ずっと小難しい音楽だと思っていた。ロックの場合、単純明快。メロディやサビのフレーズ、歌声や歌詞の内容に心震わさればいい。一曲の時間だって、例外はあるものの、長いものでも5分くらいだ。
 ジャズは違う。ジャズ・ボーカルというジャンルはあるが、基本的に唄はないし、一曲の時間が10分を越えるものも珍しくはない。正直な話、ロックを聴きなれた耳にはジャズは捕らえどころのない音楽のように感じられ、どこをどう楽しんだらよいのか分からなかったのだ。
 しかし、今から10年前に買った一枚のアルバムがジャズへの認識を変えた。マイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」である。
 
 「カインド・オブ・ブルー」にはジャズにありがちな無駄なアドリブ、冗長なソロパートがない。一曲目の「ソー・ワホット」(「何じゃい、それがどうした」というマイルスの口癖)から最後の「フラメンコ・スケッチ」まで一瞬の隙もないのである。フレーズは熱いのだが、マイルス・デイビスは最後までクール。そのトランペットの音色は例えるなら真っ赤に燃え盛る炎ではなく、静かに燃える青い炎だ。

 モダンジャズの最高傑作「カインド・オブ・ブルー」にも欠点はある。スピーカーから出てくる音とは正面から向き合わなければならない。とてもテンションが高いアルバムなので聴く者も緊張をしいられ、リラックスできないのだ。しかし、その緊張感は心地の良いものだし、気持ちをポジティブな方向に導いてくれる気がする。

 先日、紹介したビートルズのオリジナル・アルバムはわずかに十数枚。しかし、マイルス・デイビスのオリジナル・アルバムはおそらく百枚以上はあるだろう。その姿を見極めようとすると時間とお金、ついでに根気が必要になる。
 でも、マイルス・デイビスというおっさんが気になる人は、とりあえず「カインド・オブ・ブルー」を聴いてみればいい。この音が心に響かなければ残りのアルバムは聴く必要がないからだ。

 ちなみに「カインド・オブ・ブルー」が発表されたのは1959年、「ア・ハード・ディズ・ナイト」は1964年。本当に素晴らしい音楽はちっとも古くならない。 

| ジャズの名盤 | 23:10 | コメント(-) | トラックバック(-) | TOP↑

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