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冬の風に吹かれて

Highway 61 RevisitedHighway 61 Revisited
Bob Dylan


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 ボブ・ディランはとても無愛想なロックンローラーだ。
 突き放すようなしわがれ声と平坦なメロディーの唄からは「別にはっきり聞こえなくてもいいんだよ」とばかりの早口で抽象的な詩が飛び出てくる。ステージではMCがほとんどなく、インタービューも大嫌い、笑顔のポートレートなんて見たことがない。
 そんなボブ・ディランを好きなって二十数年になるが、未だにどこが良いのか自分でもよく分からない。その唄の中にロックの核心のようなものは確かに感じる。しかし、それを言葉で表現するのはとても難しい。

 北海道の冬はボブ・ディランに似て、無愛想な季節だ。
彩りがない白一色の風景に冷たい北風を吹かせ、外気に触れるものすべてを凍りつかせてしまう。厳しい冬をいかに過ごすかが、北海道の生活ではとても重要なことになる。冬が一年の三分の一を占めるからだ。

 季節を人に例えるなら、夏は陽気でつきあいやすい友達だ。しかし、北海道の夏は駆け足でやって来て、ある日突然に去ってゆく。きまぐれな奴とはどうしても深いつきあいにはなれないものだ。
冬は無口で思慮深くて、とっつき難い友達かもしれない。でも、何年かつきあっていると、その良さが少しずつ分かってくる。時には厳しいことも言うけれど、決して悪い奴ではない。じっくりと想いを暖める時間を与えてくれるし、意外にもやさしかったりするのだ。

 ぼくは厳しい寒さの日に好んでボブ・ディランを聴いている。無愛想な歌声が「なまぬるい風ばかりにあたっていると馬鹿になるぜ、どんな時でもやるべきことをするだけさ」と語りかけてくる気がするからだ。
 初期の名曲「風に吹かれて」の中でボブ・ディランは「友よ、答えは風の中にある」と唄った。「なぜ北海道に移り住んだのか?」という自問への答えも、冬の風の中に舞っているのだと思う。
 冷たい風にさらされるのも、時に悪くはない。

「イーストサイド」04号に執筆したものを加筆して転載。

 すみません。今日も多忙状態につき、過去に書いた原稿の転載です。

 選んだアルバムは「Highway 61 Revisited」(邦題は「追憶のハイウェイ61」)。
 これはボブ・ディランの長いキャリアの中でも無愛想さでは一、二を争うアルバムだと思う。なんてったって一曲目が底意地の悪い曲の代表格「Like a Rolling Stone」だ。
 刺々しい怒りのこもった声、攻撃的な曲の数々。キャリアの中で最も「ロック」なボブ・ディランが、このアルバムには記録されている。

 転載した文章の中で、ぼくはボブ・ディランを冬の冷たい風に例えたが「Highway 61 Revisited」は真冬の嵐だ。

| ボブ・ディラン | 11:15 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ジャケットはお間抜け、だが傑作「ストリート・リーガル」

Street LegalStreet Legal
Bob Dylan


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 「ジャケ買い」という言葉がある。アルバムは作ったアーチストのことはよく知らないが、ジャケットが気に入った。ジャケットがかっこよければ、きっと中身の音楽もかっこいいだろうという買い方である。
 この「ジャケ買い」は、あながちまちがっていないと思う。ロックやジャズの名盤といわれるものに、かっこ悪いジャケットはほとんど見当たらない。逆にいえば、かっこ悪いジャケットのアルバムは、中身も大したことがない場合が多いのだ。

 しかし、中には例外もある。今回紹介するボブ・ディランの「Street Legal」は、そのうちのひとつだと思う。
 そもそも、ボブ・ディランには「ホンマに考えて作ったんかいな」と目を覆いたくなるようないい加減なジャケットが多い(ロックの名盤の筆頭に上げられる「Highway 61 Revisited」「Blonde on Blonde」など、かっこいいジャケットもあるが)。 
 「Street Legal」は黒のジャケットを片手に階段を下りてきたボブが「通りの向こうの店で昼飯でも喰おうかな。オッと、飛び出しちゃいけない。車が来ないか左右を確認してと・・・・」ってな感じの、かなりお間抜けなジャケットである。

 このセンスのかけらもないジャケットのおかげで「Street Legal」は別に聴かなくてもいいボブ・ディランのアルバムのひとつにされている気がする。しかし、ぼくは数あるボブ・ディランのアルバムの中でも、上位に置くべき傑作じゃないかと思っている。
 フェードインで始まる一曲目の「Changing of the Guards」から、名曲の連発。曲も素晴らしいが、声が良い。長いキャリアの中で、何度も声質を変えてきたボブ・ディランだが、ザラザラとしているのに艶のある声で絶妙のシャウトをするこの時期の声が一番好きだ。

 「Street Legal」中で、特に好きなのが「Baby Stop Crying」「s Your Love in Vain?」「True Love Tends to Forget」の三曲。いずれも恋に落ちた時の男の切ない気持ちを歌ったものだ。
 実は男の情けない恋の歌を唄わせれば世界一の歌手がボブ・ディランである。さらに、情けない心情をさらしながら女性に甘えるのが、これほどまでにウマイ人もいない。対抗できるのは、きっとジョン・レノンぐらいだ。

 例えば「True Love Tends to Forget」では、あの少し鼻にかかった声で「おまえはオレのもんや、行かんといてくれ。裏切ったらイヤやで。オレはお前を探して求めて、メキシコからチベットまでさ迷いたくないんや」とベタベタに甘えるくせに、最後は「でも、ホンマの愛は忘れがちや」と落とす。
 書いている方が大阪弁で表現しないと恥ずかしくなるような詩を、ボブ・ディランというおっさんはサラリと唄う。この良さが分かる人には「Street Legal」はたまらない一枚だ。

 真っ先にこれを聴けとはいわないけれど、ボブ・ディランの声と曲が気に入って「Highway 61 Revisited」や「Blonde on Blonde」がかっこいいと思ったら、ぜひ「Street Legal」も聴いて欲しいと思う。

| ボブ・ディラン | 10:46 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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ボブ・ディラン 「At 武道館」

武道館武道館
ボブ・ディラン


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 今年最初の名盤紹介を何にしようかと考えているうちに、1月15日になってしまった。過去のログを見直してみると、まだボブ・ディランについてはBlogに書いていない。
 今年の一発目はぼくが最も愛聴しているボブ・ディランのアルバム「At 武道館」を紹介しよう。

 1978年、ボブ・ディランが初来日することになった。
 日本のマスコミは「フォークの神様がやって来る」と大騒ぎしたあげく、薄化粧をしてステージに立った白いスーツ姿のボブ・ディランに驚いて「まるでラスベガスのショー」と酷評し、「来日は離婚の慰謝料稼ぎのため」と書きたてた(ちなみに彼は最初からロックンローラーだし、前のツアーの「ローリングサンダー・レビュー」で化粧をしてステージに上がっていた)。

 今なら「ボブ・ディランとて芸人。歌を唄って慰謝料を稼いでどこが悪い」と言える。しかし、当時のぼくは素直な中学生で、新聞や雑誌の書くことはすべて正しいと思っていた。マスコミのいうことを真に受けて「ボブ・ディランは変わってしまった」と決めつけてしまったのだ。
 さらに、直後にリリースされた「At 武道館」を聴いて、ボブ・ディランがますます分からなくなった。作り込まれたアレンジと丁寧な歌い方。これまでになかったスタイルのライブに強い違和感があった。以来、ぼくにとってのボブ・ディランは理解不能なミュージシャンになってしまった。

 再びボブ・ディランを聞くようになったのは、30歳を過ぎ、北海道に来てからだ。きっかけは、みうらじゅんの「アイデン&ティティ―24歳/27歳」を読んだことである。そこには初めてボブ・ディランを聞いた時に感じた「青臭いけれどホントは大切なこと」が描かれていた。
 ボブ・ディランのアルバムを聴き直してみると、彼のことを勝手に誤解していたことに気がついた。当然「At 武道館」の評価も百八十度変わった。

 ボブ・ディランは来日時のインタビューで「日本へはショーをやりにきた。そして、川の流れを見にきただけだ」と答えた(なんてかっこいい台詞だろう)。
 総勢13名のバンドを従えたボブ・ディランは、初めての日本のライブために一ヶ月以上もリハーサルを繰り返してきたらしい。前のツアーの「ローリングサンダー・レビュー」はその場のノリでラフに感情をぶちまけるようなステージだったが、インタビューのとおりに「At 武道館」は緻密に計算され、入念に作り込まれた「ショー」だったのである。しかし、この「ショー」が素晴らしい。ボブ・ディランの「ショー」は単なる「ショー」ではない。

 「ディランはこうでなければいけない」という変な先入観がなければ、「At 武道館」は最も聴きやすいボブ・ディランのアルバムだろう。セットリストは当時のベストアルバム的な選曲。名曲の数々ががらりと姿を変えて演奏される。ボブ・ディランがツアーのたびに曲のアレンジを変えることのは毎度のことだが「At 武道館」ほど緻密なアレンジを披露したことはない。
 さらに特筆すべきは、その歌声だ。珍しく歌詞がはっきりと聞こえるほど丁寧に唄い、声は艶がありながら適度にざらついている。ボブ・ディランは長いキャリアの中で何度も声質を変えてきたが「At 武道館」前後の声が最も素晴らしかったと思う。

 「At 武道館」はには「フォークの神様」でもなければ、「預言者」でもなく、「世界最高の詩人」でもない、ただの歌手のボブ・ディランが記録されている。
 しかし、歌手に専念し、かっちりと作り込まれた演奏の中に、高いテンションを感じる瞬間が何度もある。白いスーツを着て、薄化粧をし、ソフトケートされたアレンジを施しても、ボブ・ディランの歌からは緊張感と毒は消え去らない。そこが素晴らしいと思えるようになったのは、つい最近のことだ。

| ボブ・ディラン | 10:56 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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